ハリガネロックコントライブ
「White」
<開場〜オープニング> ルミネ空席情報や@ぴあの売れ行き状況などから、回を増すごとに後方部の空席が目立っていたEVENTシリーズと同じ模様を覚悟していた人は多いと思う。 私が当日券を買ったのは14時ちょっと過ぎだったが、割り当てられた席は眩暈を覚えるほどの前方。 (これは…またダメかも) と、早くも諦めモードに入り、若干切なくなった。 (本当、いつからこうなっちゃったかなぁ、ハリガネのイベントは)と。 4じ6じが押した関係で、開場時刻がずれたので、無印で買ったお菓子を廊下で食べて腹ごしらえ。 18時50分頃中に入る。 真っ先に思ったのは (あれ?…席埋まってる) だった。 ローソンチケットの売れ行きは問題無かったのか、直前まで迷ったけれども駆けつけたハリガネファンが大多数だったのか。 それは分からないが、ともかくあの悪夢のような“風通しのよさ”は免れた。 アンケートはシンプルに一言。 「何色でした?」 何だか胸が疼く。 客電が落ち、両側のスクリーンにブリッジが映る。 フライヤーの撮影模様のよう。 そして、前衛的な画風に定評がある大上邦博画伯が、絵筆を走らせる様子が映し出され… |
<#1 「ゴミさん」> 禁止されている夜にゴミ出しに来た男(大上)。 帰ろうとすると、ゴミの山の中から誰か(松口)が飛び出してきた。 ゴミ出しのルールを守れていない男に、事細かにゴミ山の主(女らしい)は説教をやり始め… (あの潔癖症の松口さんが、大小入り混じったゴミ入りの袋を全身にくくりつけて飛び出てきただけでも、このライブに掛ける意気込みは伝わってくるというもの(笑)。 松口さんがあの中に隠れてるなんて全く予想していなかったので、出てきた時は本当に驚いた。 驚きながら (あっ!今日のハリガネ、何か強い!) と思った。 こちらの予想を良い意味で裏切ってくれたのは、久しぶり。 (このライブ、いけるかも) と思った。 もっともオチはというと、私は(ん?)という感じでしたが) |
<ブリッジ> ・ユウキロックの振り返り路上インタビュー。 「ゴミさん」が出来たきっかけや、相方の様子などを松口さんに聞いていく。 ただ、インタビュー場所はどう見ても新宿駅の連絡通路で、椅子もパイプ椅子。 そんなチープなセット(?)と、スーツ姿と正装して真面目な顔で答えていく松口さんとのギャップも可笑しかった。 一軒家に引っ越した時、集合住宅時代とゴミ出しのルールが違うことで注意されたことが、このコントが出来たきっかけとか。 近々引越しを真剣に考えているとかどうとか。 ・大上画伯がルミネの楽屋の壁に貼った紙に、絵筆を走らせているVTRに切り替わる。次のコントの予告絵。 |
<#2 「タケウチさん」> お好み焼き屋に入った男(大上) ところが一人だけいる店員(松口)は、サングラスにポマードヘアと、“その筋”の臭いがプンプン。 “豚玉”1枚頼むだけでもとんでもないリスクを背負い込まなければならず… (これもオチは個人的には(ん?)という感じでした。 途中のやりとりのテンポが弾んで面白いのに、オチはちょっと弱いかなぁ、という。 まぁ、素人の戯言です) |
<ブリッジ> ・ユウキロックの振り返り路上インタビュー。 場所は新宿郵便局周辺だったような。 やくざっぽいキャラの王道はやはり<竹内力さん>だろう、と。 ・絵筆を走らせる大上画伯。次のコントの予告絵。 |
<#3 「上林麗華」> 取材を受けるため、ファミレスにいる大上だが、2時間待っても一向にインタビュアーが来ない。 やっと現れたライターは、 「皇族が被るような緑の帽子」に 「黒のストレートロングヘアー」、 「おしゃれな傘」を持った “上林麗華”(松口)。 上品と見せかけた行動や言動の裏に潜む、麗華の無礼さと図々しさに大上がキレると… (“マツグチコスプレコレクション・2004 autum”と、勝手に銘打ってしまった松口さんの女装。 コントの導入部分で帽子が脱げてしまい、ちょっと動揺したのかセリフを噛んだりも。 麗華「〜と考えてよろしいでしょうか」 大上「よろしいです」 麗華「さようでございますか」 大上「さようでございますよ!」 というやりとりを何べんも繰り返す場面が多々あり、 (あぁ〜、そういえば漫才の時も、ウケたところは何度もカブセするよな〜) とか思いながら見た。 コントの中で、江口洋介の「恋をした夜は」の歌詞に引っ掛けたセリフがあった。 余裕でピンと来た自分が、ちょっと嫌(苦笑)) |
<ブリッジ> ・ユウキロックの振り返り路上インタビュー。 どこかのグラウンドがバックにあった。 上林麗華レベルほどではなくても、時々(えっ?)と思うライターはいるらしい。 普段の取材では、松口さんが殆ど喋って、大上さんは松口さんの言ってることをなぞることが殆どなので、アイツは大変やったんやないですかね?とのこと。 ・絵筆を走らせる大上画伯。次のコントの予告絵。 |
<#4 「ユウキテツヤ」> テーマパークで働く男(大上)。 そこに、髪の毛が若干お亡くなりかけのスーツ姿の男性(松口)が、泣きながらベンチに座り出す。 なんと、“迷子”らしい。 明らかに胡散臭いがとりあえず、“母親と離れた32歳の迷子”の世話を始めてみるが… (ご多分にもれず、オチは個人的に“ん?”でしたが、そのキャラで来るか〜!?と出てきた瞬間から笑った。 32歳の迷子と、テーマパークの明るい従業員のやり取りも好きでした) |
<ブリッジ> ・ユウキロックの振り返り路上インタビュー。 ルミネ下のロッカー周辺だったような覚えが(曖昧)。 元気いっぱいな大上さんを見てたら、いら〜っとするらしい。 自分の子供が迷子になったらどうする?というインタビュアーの質問から、自分の理想のヨメ像をいつしか語り出す松口さん。 “家内”という言葉がぴったり来そうな人が好みらしいということは分かったが、だから“32歳・独身・恋人募集中”になるんだろうよ、とも思う。 ・絵筆を走らせる大上画伯。次のコントの予告絵。 |
<#5 かわもとひかり> 体調を崩し、病院に行った男(大上)。 そこに現れたのは、ド派手なピンクのワンピースを白衣の下に着込んだ “自称・アイドル女医”の“かわもとひかり”(松口)。 お互いを愛称で呼び合うこと(ひかりんだったか?)を強要したり。聞かれてもいないプロフィールやペットの話題を自ら語り出すなど、自称アイドル女医・ひかりの暴走は患者そっちのけでとどまるところを知らず… (袖から大上さんのところに走り込む時、きれ〜いにコケた松口さん(^^;。 再び袖に逃げ帰る。 大笑いしながら、(こういうハプニングも何かハリガネらしいわぁ)と思った。 「まだ来んのかな〜!ちょっと〜!」とアドリブで呼び込む大上さん。 何事も無かったかのように、動揺を必死に押し殺してるのが丸分かりな様子で出てきた松口さん(笑)) |
<ブリッジ> ・ユウキロックの路上振り返りインタビュー。 “かわもとひかり”のモデルは、80年代のアイドル。 トイレなんか行きませ〜ん、と平気で宣言していた古き良き時代のアイドル。 今はそんなアイドルがいてないので、客にそれが伝わるか不安だが、めっちゃこのコントがウケていたら、客の年齢層は“それなり…”ということでしょうねぇ、とのこと。 「まぁ、僕らのライブのお客さんはおばちゃんが多いんでねぇ」 と、何度も客の年齢のことを連発する松口さん。 そこに、誰か分からないけど一人のお客さんが 「…失礼な(苦笑)」 と、実感を込めたつぶやきをぽつり。 その人の周囲(含む:私)の間で (ねぇ〜)(ですよね〜) みたいな、共感とある種の連帯感がこもったくすくす笑いが起きる。 元ネタが分からない年齢層ばかりだった結果、笑いが起きなくてへこむのは、客じゃなくてハリガネロックでしょうに(笑)。 ・絵筆を走らせる大上画伯。次のコントの予告絵。 |
<#6 「アイガさん」> ミュージカル「美しき林(自信なし)」のオーディション会場。 応募者を呼び込んだ演出家(大上)の目の前に現れたのは、アダムス・ファミリーに出てきそうな“ロングヘアー”で“白塗りの顔”に“黒のワンピース”を着込んだ、<アイガ>と名乗る女性。 明らかに人間離れしたムードが漂う<アイガさん>に恐怖を覚えながら、オーディションを始めてみるが… (一言で言うと、“出たーっ!”。 もう、これしか無いです。 ちなみにこのコントで松口さんが喋ったのは、「…アイガです」という自己紹介と歌唱力テストの時のあるフレーズ(一言)のみ。 後はひたすら、“アイガ語”とでもいおうか、嬌声と雄叫びのみ。 気持ち良い壊れっぷり。 <女装の恐怖キャラ>というと、2丁拳銃の小堀さんが3〜4年前の単独ライブで演じていた「虹子」が浮かぶ。 <アイガさん>を見ていて (…<アイガさん>は顔のメークも不気味さを増すのに一役買ってるけど、「虹子」って限りなく小堀さんの素の顔と近かったよなぁ) ということに気づき、 (…負けるなコホリ、ファイト!) と、どうでも良いエールをとりあえず送ってみた。 |
<ブリッジ> ・ユウキロックの路上振り返りインタビュー。 場所は、こつこつ貯めていた大好きなお金と、今年の下半期に何度もお別れしたであろう某パチスロ前。 このライブが終わったら、また一攫千金を夢見て通う予定のよう。 あーぁ(苦笑)。 この壊れコントが、「white」で一番最初に出来たものらしい(^^;。 見ているこちらも思っていたが、作った本人も内容のヤバさと壊れぶりは自覚しているらしい。 実在する女子プロレスラーがモデル。 この時に言ってたのかどうかは忘れたが、今年の終わりから来年に掛けて、こういう壊れたネタをやっていきたいらしい。 危ない壊れた世界をやりたくてしょうがなくなったが、漫才でそれをやるのは無理。 コントライブをやろうと思ったのは、それがきっかけらしい。 ・絵筆を走らせる大上画伯。次のコントの予告絵。 |
<#7 運命〜猫と男〜> 1匹の野良猫(松口)との出会ったために、運命を狂わされた男(大上)の3年間に渡る愛憎(?)劇。 (幕間からコントが始まるまでの時間が長かった。 <アイガさん>の白塗りが尋常じゃないほどのびっちりメークだったので、そのメークを落とす時間かなぁと思いきや、<アイガさん>のメークに“劇団四季・「CATS」”を付け加えての登場(笑)。 楽しみ過ぎ!) |
<ブリッジ> 制作スタッフの紹介など。 |
<エンディング〜感想> 鳴り止まない拍手の中、開いた幕の向こうには90度お辞儀の2人。 大上さんは見るからに疲れた感じが漂っていた(苦笑)。 松口さんは黒のツナギと帽子。 「かわもとひかり」でコケた時、こんな格好でコケてと…何だか泣きそうだったらしい松口さん(笑)。 お互いのお気に入りのコントも聞いたが、そのメモは読み取れず…。 壊れコントは、一緒にやってる大上さんもさっぱり意味が分からなかったそう(^^ゞ。 「何、あれ!?」と、松口さん自身も意味が分からないぶっ飛んだ設定の数々を検証し始める。 松口さん、気づけば今日は7割奇声でまともな日本語を喋っていないことに気づく。 ルミネ・ネタ組でもこういうコントをやっていくつもりはあるらしいが、「客に意味がさっぱり伝わらない」という単純にして最大の難問が横たわるのがネック(苦笑)。 アンケートも書いて下さいね、と松口さん。 ただし、最初は大上さんが読んでフィルター分けを行い、悪口めいたものは大上さんで止まるらしい(苦笑)。 松口さんはガラスの心臓だから、というのがその理由。 あらあら…。 非常にすっきりした気持ちで客席を後にし、アンケートに一部修正を加えて提出。 ロビーで 「すごくない?みんなアンケート書いてる」 「いろんなとこでみんな書いてる!こんなの初めて見た〜」 という会話が聞こえた。 なるほど、壁やら机やらさまざまな場所でアンケートを埋めてる人が大勢いた。 (あぁ、最後の最後まで何か良いなぁ) と思った。 ++++++++++++++++++++++++++++++++ <感想> 9月18日の「復活マンザイマニア」以降、私がハリガネロックが舞台でネタをしているのを見に行ったのは僅か1回。 その1回もハリガネロックを見たくて行ったのではなく、偶々その日のネタ組にハリガネロックが組み込まれていたに過ぎません。 そして、これ以降、私はハリガネの舞台を見に行かなくなりました。 あれほど好きだったハリガネロックの舞台を約2ヶ月間、1回も見に行かない。 それなのに、そのことを“寂しい”とか“残念”と思うことは、申し訳ありませんが殆どありませんでした。 (あぁ、こういうふうに離れていくんだなぁ)と、他人事のようでした。 (楽しくない。乗れない。何で?何で?)。 「復活マンザイマニア」の2時間は、殆どこう思いながら過ごしました。 それ以前からハリガネの漫才についていけなさを覚えてましたが、 (「マンザイマニア」では違う筈) と信じていました。 (「マンザイマニア」で乗れなかったら、もうダメだなぁ) と、冗談っぽく考えていたら、本当に乗れなかった。 びっくりでした。 3年以上の沈黙を破って松口さんが再開したブログは、更に乗れなかったというかついていけなかった。 ハリガネに関するものに軒並み乗れなくなった。 「white」の売れ行きに関しても冷めていた。 (だろうなぁ)と。 (だって私も買ってないし、それ以前に行く気もそない…だし)と。 それでも「white」に行ったのは、ハリガネがやっぱり好きだから、という理由ではない。 日記にも書いたが、“けなすつもり”で見に行った。 (ほら、やっぱり)と。 あんなに切れ味が鋭かった漫才があの状態なら、コントはなおさらでした、と言うつもりだった。 (ハリガネロックなら…)という期待は無かった。 徹底的に見くびりながら開演を待った。 そんな風に斜に構えながら見るつもりだった私の屈折は、1本目のコントで松口さんが予想外の登場をした瞬間にたやすく踏み潰された。 (今日のハリガネは違う!今日のハリガネは強い!) と、直感的に思った。 イベントの主導権を素早く握り、最後まで手放さなかった。 これが本来のハリガネロック。 ハリガネロックが持つ色々な“力”のうちの1つ。 それを知ったばかりに、私はずっと追い続けざるを得なかった。 「white」は、現時点のハリガネロックが“本当にやりたいこと”だけを詰め込んだライブだった。 ここ最近、ハリガネのライブで何となく感じがちだった“迷い”や“もがき”、“焦り”はそこには無かった。 ネタの殆どは、万人にウケることは難しいだろうなぁと思うものだったが、 (このネタの面白さが分からない客の方が悪い) という、後味の悪い開き直りではなく (お客さんは分からんやろうなぁ。でもすいません、オレらはおもろくてしゃぁないんです) という、憎めない屈託の無さを感じた。 ハリガネは、ライブが進むごとにどんどん活き活きしてきた。 私はそんなハリガネを見ていることが、嬉しくてしょうがなかった。 (やりたいことをやると、こんなにのびのび出来るんだ) と思った。 見ているこちらもどんどん気持ちが解放されていく感じだった。 久しぶりにハリガネロックの掌で遊ばされてる感覚だった。 ハリガネロックの情報を意識して拾わなくなったので、M-1に出ていないと知ったのは遅い時期だった。 知ってからも、そのことについて特に思うことは無い。 バツイチコンビのハリガネロックがM-1に挑戦出来るのは、来年が最後。 最後の挑戦は、もちろんアリだ。 M-1にまつわる独特の一喜一憂は好きではないけれど、後1回だけなら我慢できる。 「ハリガネロック」=「漫才」。 この単純な式で表されることは、ハリガネロックがもっともこだわり続けていることだと思う。 ハリガネロックには漫才をずっとやり続けて欲しいという思いは変わらない。 私がハリガネの漫才に“ついていけなさ”を覚えたのは、漫才に“ハリガネロックの色”が出てないと感じたからじゃないだろうか、と思う。 推測だけど、その漫才に“ハリガネロックの色”が出ていないことを一番感じていたのは、やっている本人達だろう。 どうせ見るなら、<ハリガネロックの色>が出ているものをやはり見たい。 もしかしたらそれは、“汚い”とか“暗い”とか“ぐちゃぐちゃ”という形容詞で表されるものかもしれない。 でも、ハリガネロックが<自分達の色>を塗り重ねた結果がそれならば、そちらを見たい。 ハリガネロックが本当にやりたいことを塗り続けたことで出来た“ハリガネロックだけの色”だから。 |