唄つるべ〜トーク&ライブ〜
at KOENJI HIGH (08/11/27)

【出演】
笑福亭鶴瓶 ハセガワ ミヤコ+入倉リョウ


<開演前>

キャパは80ほどの小さなライブハウス。
 入り口に貼られていた「出演者:笑福亭鶴瓶」の文字を見つけると、反射的に顔がほころんだ。
 私を笑わせるのにネタもくすぐりもいらぬ。“笑福亭鶴瓶”の5文字があれば良い。

ワンドリンク制なので、カルアミルクを注文。
 美味しかったのでペース早めに飲んでしまい、開演頃はもう顔が真っ赤。
 出て来た鶴瓶さんに「...カッコイイ(しみじみと)」と声を掛けるほどのほろ酔いぶりに。


<トーク(覚えている限り...)>

・円楽さんの近況

 始まる前、円楽一門会に行ってきたという鶴瓶さん。
 「いつ見られなくなるか分からんやんか」という鶴瓶さんの発言に笑う客多数。
 すると、

 「いつ会えなくなるか分からんのやから。会えるときに会っとかな」

 と付け加え。
 母亡き後、これは私もよく思うようになった。

 円楽さんも落語家・笑福亭鶴瓶を割と気掛けてくれている一人だそうで、大銀座落語祭のときは、自分が透析を受けるため抜けるので、鶴瓶さんの落語を見てあげられなくてごめんね、と謝ってこられたこともあるそう。
 病気で倒れられた後、復帰の舞台を「無学」に選んだ(その時の演目は倒れた時に掛けたときと同じ「芝浜)」が、鶴瓶さんはそのプランを最初知らなかったそうで、報道で知り慌てたそう。
 結局国立演芸場の高座を最後に円楽さんは引退されたが、自分で自分の引き際を決められる人はそういないし、難しいのだから、あの引き際は見事だったと。
 しかし、落語に目覚めるまで、円楽さんの面白さは実は分からなかった、とも。

 まだ円楽さんは十分に落語が出来るのだそうで、円楽さんが今日の会で披露したという「スワン」という小噺を再現してくれたが、フリの真面目さと対照的なオチの馬鹿馬鹿しさが妙にハマり、客席は大爆笑。

・不肖の弟子

 弟子が結婚することになったが、師匠にも兄弟子にも本名で案内状を送ってきたり、挨拶をお願いしますが直筆ではなく印刷だったため、怒ったという話。

 この流れから、おかしな弟子入り志願の話に。
 一人は大浴場につかっている鶴瓶さんの前に立ち、「弟子にしてください!」と言ってきたそうだが、大浴場のため、当然全裸。
 目の前でぷらぷらあるものが揺れるのを目にするハメになったとか。
 もう一人は、鶴瓶さんの家の近所の寿司屋で働きながら弟子入りのタイミングを狙っていたそうで、鶴瓶さんが店の前を通りがかったと思ったら、下駄履きで追い駆けてきて弟子入り志願をやってきたそう。

・笑福亭鶴瓶のテーマはバランス

 紅白の司会落ちたなぁーと自虐モード。
 去年散々持ち上げてくれた某紙は落選早々、中居・仲間コンビの写真の横に「夫婦、鶴いらず」なんて見出しを記事につけていたそうで、「人気なんて当てにならんもんですわ」と自嘲気味にぼやく。
 
 紅白がないなら、とマネージャーが持ってきた仕事は「紅白ないなら、逮捕だ、授乳だ、爆発だ」というタイトルからしてどんな系統の番組なのか丸分かりの企画。
 丑年なので牛のカレンダーを作ることになり、寒い中牛のコスプレをし、乳牛の乳をすったそうだが、足を600kgの牛に踏まれるアクシデント発生。
 折れたと思い病院で診てもらうことになったが、夕方で病院は混雑。
 そんな中、「牛の乳を吸おうとして足を踏まれました」と怪我の経緯を医師に説明したところ、軒並み呆れられ、「何歳ですか?」と聞いてきた医師もいたそう。

 しかし、鶴瓶さんはこういう仕事が嫌いではないそう。
 真面目で社会派の仕事をしたら、反動で物凄く下らないことをやりたくなり、両方こなすことでバランスが保たれる、と。

・「炭焼き屋になれ」byタモリ

 ここで、「笑っていいとも!」を辞めたかったときのことを話す。
 若手もたくさん出て来たし、もう良いだろう、と思い、タモリさんに降板の意思を伝えた鶴瓶さん。
 タモリさんは鶴瓶さんの意向を聞くと、

 「炭なんて今じゃもう殆ど使われてないのに、炭焼き屋ってあるだろう。良い炭焼き屋は、何年も変わることなく焼き続けてる。そしたら『ここだったら昔から変わらないで良い炭が手に入る』っていうことで客もやってくるんだ。アンタにとって『いいとも!』が炭焼き屋なんだ。アンタみたいにアクが強い芸人は『いいとも!』みたいな番組に何年も出続けることでバランスが保たれるんだよ。だから、アンタは辞めちゃダメだからね!」

 と諭したそう。
 その時はあまり納得行かなかったが、「いいとも!」で長年変わらない立ち位置を務めていくうちに、(あのときのタモリさんの言うたことはこういうことやったんやな)ということが掴めて来たそう。

 ちっとも年相応に落ち着かないさんまさんを反面教師のように見ている鶴瓶さんだが、やっぱり、タモリさん、ビートたけしさん、さんまさんは“BIG3”と呼ばれるだけのことはあると思っているそう。

・笑福亭鶴瓶が思う「優しさ」とは

 あまり詳しく書くとそのお弟子さんが特定されるので、詳細は省略するが、牛に足を踏まれた日、お弟子さんの婚約者から鶴瓶さんに相談が来た。
 お弟子さんが彼女を一番卑怯な形で裏切り、彼女がその件についてお弟子さんの親御さんに相談したところ、親御さんも彼女が立ち直れない言葉を投げ掛けたそうで、彼女は心身ともボロボロに。
 鶴瓶さんが関わる問題ではなさそうだが、彼女が本当に傷ついていることが分かったので

 「僕はね、弟子を破門にすることは出来ないです。でも、破門にすること以外であなたが望むことは何でもやりますし出来ます。約束します。だから言って下さい」

 と伝え、お弟子さん(+お弟子さんの親族)も厳しく叱りつけた。
 彼女の方は鶴瓶さんに何度か相談することでだんだん気持ちが吹っ切れてきたようで、大分回復したそう。

 「あのね、人間が誰かにあげられるのは優しさしかないんですよ。
 お金が無い人も頭が足らん人も優しさやったらみんな平等に持っていて、分けてあげられる。
 人間が人間を傷つけることもあるけれど、優しさをあげることが出来て、救うことも出来るんです」

 鶴瓶さんのこの発言を聞いた時、ハッとした。
 というのも、“人間が人間を救う”というフレーズは、2丁拳銃のコントを見るとどこか思うことでもあるので、(人に望みを持つ、という世界観は似てるのでは?)と、やっと自分なりに思い当たる“似てる”部分が見つかったので。

・軟化しているらしい上岡さん

 ずっとドキュメンタリーのカメラマンが鶴瓶さんを追い駆けて撮影しているらしいが、発表時期は未定らしい。
 「死んでから出すのんと違う?でも、オレが死んだら誰もいらんわな、そんなん」という発言に、(いるーっ、いるーっ!悲しいけどいるーっ!)と、心中激しく首を横に振るワタクシ。

 「大体、自分の番組は(鶴瓶さんは「きらきらアフロ」は松嶋さんが主であると思っているらしい)DVDにはせんのですよ。『パペポ』もよう言われるけどせぇへん」
 と、あらためて「『鶴瓶・上岡パペポTV』非DVD化宣言」が。
 これはいつも言い続けてらっしゃるので、特に意外性はなかったが、
 「上岡さんはね、引退してるからもうどうでもエエのやろなぁ。『(DVD化)は別にしてもせんでもエエのんちゃう?』言うてはったけど」
 という上岡さんの近況には少し驚いた。
 鶴瓶さんと一枚岩で「『パペポTV』DVD化拒否」を断固として貫き、ゼロか100しかないイメージの上岡龍太郎氏が、“どっちでもエエ”と曖昧なことを言うようになってるなんて...。

 「鶴瓶、仮免学科試験に落ちる」「鶴瓶の本免学科試験結果」「鶴瓶の地球回転説」「パキスタンの首都はパキネール」「晴れたら満月」など、20年近く経っても笑える話満載だが、面白エピソードを細切れにつなぎ合わされた「傑作集」としてDVD化されるよりも、CSで再放送して欲しい。
 視聴者から届いたハガキの住所を番地まで言っている回があったりするから、そこは処理が必要だけど。

・鶴瓶感激!らくがきのオッサンに会う

 白川由美さんから電話が来た鶴瓶さん。
 今、パーティーやってるからおいでよ、とのお誘いで、白川さんはほろ酔い気味。 
 パーティーとか苦手やから、と一旦断ったが、そのパーティーは二谷友里恵さんの誕生会とのこと。
 友里恵さんなら知らない仲ではないので、顔見せ程度に出ることに。
 
 あまり目立たないように会場の隅っこにおり、出席者を見ていたら、ある人物が目に入り驚愕。

 「二谷友里恵さんって、今、家庭教師のトライの会長と結婚したはんねん。で、あのCMでらくがきされてるオサン、あれが会長なんやけど、らくがきのオッサンが目の前におんねん!思わず、『らくがきのオッサンや!』いうたら、あの会長、関西の人間やから、『ハイ、らくがきのオッサンです!』って。『会いたかった〜』って(笑)」。

 二谷友里恵さんの前夫は郷ひろみさんだが、祝儀額に悩んだそう。
 有名人同士の結婚なのでそれなりの額を包もうと思っていたが、某先輩ゴッドシンガーから「披露宴をテレビ中継するから、その分のお金入るのにわざわざ張り込むことないよ!鶴瓶、私ら五万円以上包まないようにしような!」とお達しが来た。
 先輩の教えを忠実に守り、その金額にしたものの、祝儀袋は豪勢なものにして表書きは代書屋に頼むなどし、いざタクシーで会場に。
 しかし、その運転手から「芸能人なら普通、ハイヤーだよね」「スポーツ新聞に載ってたけど、今日の披露宴、最低でも10万包むらしいね。鶴瓶さんはいくらなの?」と悪気がない詮索が続いていたたまれなくなり、途中で降ろしてもらい、銀行で急遽5万円をおろし、質素な祝儀袋を慌てて買い込んで追加したものの、“五万円”が頭の中から離れないため、「拾萬円」と書きたいのに「伍萬円」と書いてしまい、何が何やら状態だったそう。

 そこに、かなり出来上がっている友里恵さんがやって来たので、「アンタな、アンタの前の結婚披露宴の引き出物覚えてる?」と訊ねた鶴瓶さん。
 友里恵さんはかなりさっぱりした性格らしく、前の結婚の話を持ち出されてもムッとしたり黙り込んだりすることなく、「アンタ達の似顔絵や!あれな、どうしようもないからファンの人にやったわ」と言ったらけらけら笑い飛ばしたそう。

・反町・菜々子の娘vs鶴瓶の孫

 反町隆史さんと松嶋菜々子さんに会ったので、いつも持ち歩いている初孫の写真を見せた鶴瓶さん。
 お孫さんは、目鼻立ちがくっきりしていて、はっきり言って可愛いそう(笑)。
 なので反町夫妻にも自慢したそうだが、触発されたらしい反町さんは自分の娘の写真を鶴瓶さんに披露。
 「そら可愛いで。反町隆史と松嶋菜々子の子やもん。でもそんなん当たり前やん。オレの顔からこの(孫の)顔が出て来たことのほうが凄い」と、自分の孫が一番可愛いということは譲らないご様子。

・ラップで保存しておきたかった電話線

 吉永小百合さんから直筆の手紙を頂いた鶴瓶さん。
 その手紙は本名の「岡田小百合」名義で届き、最後には携帯電話の番号が!

 (手紙読んだの遅かったから、今更電話してもなぁ...。でも、せっかく教えてくれはったし...)と、一晩中悶々とした結果、意を決して電話することに。
 留守電だったので、笑福亭鶴瓶である旨を吹き込んで切ったら、すぐにコールバック!
 夢見心地だった、という鶴瓶さん。
 「吉永小百合さんの家の電話線と俺の家の電話線が繋がってる思ったら...あのときの電話線、サランラップで保存したかったわ〜」と、返す返すも残念な調子でそのときのことを振り返っていたが、鶴瓶さんがこんなに目をきらきらさせながら興奮した調子で語り出すのを見るのは珍しかったので、(あぁ、本当に吉永さんは鶴瓶さんにとって憧れの存在なんだなあ)と、若干微笑ましく思いながら聞いていた。

・凄い人ほど普通

 吉永小百合さんは大女優なのに少しも傲慢なところがなく、誰が相手でも変わらないそう。
 「普通やねん。あの吉永小百合が普通やねん。凄い人ほど、ホンマ普通やで」と感じいった様子で話す鶴瓶さん。 

・常識が通じないNHK

 この話を「家族に乾杯!」のスタッフに話したら、「じゃぁ、(番組のゲストに)オファーしましょう」ととんでもないことを言い出したので、「アホかーっ!」と叱りつけた鶴瓶さん。
 しかし、実は高倉健さんにもオファーしていたということを知り(高倉健さんからは、オファーは受けることが出来ない旨が長々と書かれた直筆の詫び状が届いたそう)、さすがの鶴瓶さんも唖然として絶句。
 NHKは常識が通じず、どこかずれているそう。

・笑福亭鶴瓶の決意・「これからもサインはちゃんとやる」

 「家族に乾杯!」で30年前に鶴瓶さんからサインを貰った、という住人に会った。
 しかし、引越しなどで今どこにあるか分からないそう。
 鶴瓶さんの中でその話は終わったのだが、持ち主の方は見つからないことが引っ掛かったらしく、姿を消したと思ったらしばらくして「あったわ〜」と得意げにサインが書かれた色紙を持ってきた。
 そこには確かに30年前の日付で鶴瓶さんのサインが。
 「お嫁入りする時にもな、お母ちゃんに送ってくれるよう頼んだんや」という方に感動したという鶴瓶さん。
 「そのサインな、綺麗に取ってくれててん。30年前のやつを今も変わらんと持ってくれてる思うたら...今までもちゃんとサインはしてたけど、もっとちゃんとサインせなあかんなぁ、思いましたね」と。

 私も6年前にマンスリーよしもと絡みで貰った2丁拳銃のサインつき色紙と写真は届いた時と同じ状態で持ち続けているし、上京するときの荷造りでも真っ先にそれを入れたので、30年間サインを持ち続けていた方の気持ちは共感できた。
 今年ニッポン放送の抽選に当選して届いた鶴瓶さんからの直筆年賀状も同様に。

・心温まるお葬式

 全く面識がなかった山田洋次監督夫人のお葬式に出席し鶴瓶さん。
 しかし、奥さんと面識があった人たちの弔辞を聞くごとに、奥さんがどういう方だったのかがどんどんはっきりし、特に奥さんの行き着けであった祖師ヶ谷大蔵の寿司屋の大将の飾らない真っ直ぐな弔辞には、ぐっと来てボロ泣きしてしまったそう

・お母ちゃんのクリスマスツリー

 私落語にもなっている話。
 あまり裕福ではなかった駿河家。
 イブの前日に生まれたためクリスマスと誕生日を一緒にされることや、近所の家にあるような立派なクリスマスツリーが自分の家にないことなどに駄々をこねる末っ子の学少年(注:鶴瓶さん)のために、機転を利かし、世界に一つしかないツリーを作り上げたお母さんとの思い出。


<歌>

ハセガワ ミヤコさんの曲を聴くのは初めてだったので、予備知識がまったくなかったことが悔やまれます。
 鶴瓶さんのトークとトークの合間にハセガワ ミヤコさんの歌が挟まれたのですが、最初に歌われた「はなうた」を聴いた瞬間から彼女が作る世界に引き込まれ、もっと知りたいと思いました。

 私は、彼女の歌を聴くと、気負ったり冷めたり背伸びをしたりせず、一見したらささやかに思える幸福をじっくりと味わいながら、穏やかな日々を紡いで暮らしている人を愛しく思う温かさが伝わって来る気がします。
 ”切ない”とか“癒し系”とか、通り一遍の言葉で言い表すことは惜しいし、言い表したくないなぁと思います。

手元に「歌種」しか現時点ではないので(08/12/8時点)、この日どの曲が歌われたか全部フォロー出来ないのが残念ですが、「はなうた」「ミルク」「月のうさぎ」「だいきらい」「おんなじ空の下」「ほんとうの恋のお話」「今は昔」は確実に歌っていたと思います。
 おぼろげなのが「あいのくに」。

鶴瓶さんはハセガワ ミヤコさんの曲を全部聴き、ライブであらためて聴きたい曲のリクエストをしていたそう。
 鶴瓶さんのトークの空気や熱を少しも壊すことなく自然にハセガワ ミヤコさんの曲が始まり、その余韻に浸っている客を徐々に自分の世界に連れ戻す鶴瓶さん。
 区切りがいいところでまたハセガワ ミヤコさんにバトンを渡し...という流れが凄くスムーズで、約2時間のライブの間、少しも飽きることがありませんでいした。
 むしろ、(あぁ、この人のファンで良かった〜っ!そして、あんな世界があることを知ることが出来て本当に良かった〜...)と、寒波襲来で寒風が吹く中非常にほっこりと心温まりながら、帰路につきました。

08年12月8日時点では、2008年に行ったライブの中で一番行って良かったと思っているライブです。

(08/12/8 記)


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