SPコント:「僕の絵」


[キャスト]
修士(2丁拳銃):漫画家になるのが小さい頃からの夢で、今も投稿を続けてるけど、中々芽が出ず、もやもやしている青年。

樅野(チャイルドマシーン):修士の右隣に引っ越してきたミュージシャン

小堀(2丁拳銃):修士の左隣に住んでるおっさん。部屋をゴミ屋敷にしている。
 修士から抗議を受けても一向に止める気配なし。

河本(次長課長):修士達が住んでいるアパートの大家。女性役でしたがハマってました(笑)

井上(次長課長):修士の彼女・聡子役(笑)。

山本(チャイルドマシーン):出版社社員。話の最後あたりで重要な役どころ。


[話の流れ]
冒頭、子供が書いた作文の映像が流れる。
 「大きくなったら漫画家になりたい」
 と、夢を綴ったもの。

 作者の名前は"川谷修士”。

数年後。
 成長した修士は、あの頃の夢を持ちつづけ、雑誌への投稿を行っている。
 しかし、中々うまいこと運ばない。
 おまけに、最近はある問題に悩まされていた。

それは
  “隣の家の小堀さん”がゴミを家の前に溜めること。

 小堀さんの家の前に山ほど置かれたゴミからは悪臭が。
 その臭いが部屋に漂って漫画が描けない、と大家の河本さんに訴えるが聞いてくれない。

 逆に
 「ゴミを溜めても家賃を払う小堀さんと、ゴミは溜めないが家賃を滞納してる川谷さん、どっちが大家にとっては迷惑やと思うの?」
 と河本さんに言われ、反論できない。

そんなおり、70年代のフォーク歌手のような外見の樅野くんが修士の隣に引っ越してくることに。
 仲間を得ようと頑張る修士だが、外見が一風変わってる樅野くんは、考え方も一風変わっているらしく、小堀サイド。
 気づけば、樅野くんも大家もゴミをため始める始末。

 修士は小堀家のゴミで漫画が描けないけど、樅野くんはそこそこ曲を作っている模様。

ある日、修士の彼女の聡子が家に来るというので、慌てて自分が出してる訳ではないゴミの数々を片づける修士。
 しかし、間に合わず聡子到着。
 一緒に来てたのが「らくだ書房(確か)」の編集者・山本さん。
 樅野くんのインタビューに来た。

 聡子によれば、樅野くんは実は
 「インディーズ界のカリスマ・モミネム」。

 自分と同じ位置だと思ってた樅野くんが実はある世界では名が通っていたことをしり、修士は複雑。

「曲を作る励みは?」
 というインタビュアーの問いに、
 「隣の家の修士さんが、漫画を一生懸命描いてる姿ですね。それに触発されてる部分が大きいです」
 と答える樅野くん…もといモミネム。

 モミネムがいうぐらいなら、きっと凄い漫画を描いてらっしゃるんでしょう、うちの出版社は漫画部門もありますから、紹介しますよ、と山本さんに言われた修士。

 「原稿見せてくださいよ」と頼まれる。

 けれど、原稿は手元にない。
 中々芽が出ない状態に苛立ち、自分の才能に見切りをつけ、
 「ゴミ」
 として捨ててしまったから。

「…チャンスっていうのは確実にあるんです。
 だけど、滅多に来ない。
 自分の作品を“ゴミ”と思う人に用はありません」
 といって山本さんが帰ろうとしたら…。

「原稿はあるわ!」
 と叫んだのが小堀さん。
 ゴミ袋を引っ張り出してぶちまける。

 中から出て来たのは修士さんが捨ててた漫画の原稿の数々。

「わしゃ、この原稿がゴミとは思われへんかったから、持っておきたかったんや。
 …オマエさんが思ってるほど、悪くは無いと思うで」。

モミネム&大家が溜めてたゴミも実は修士の原稿。
 漫画のキャラクターはおちゃらけ系でしたが(^^;。

全然自分の迷惑なんて考えてくれてないと思ってた人達が、実は自分よりも、自分の力を信じてくれてた、と気づく修士。
 あらためて、山本さんに頭を下げて、原稿を見てもらうお願いをする。
 快く引き受ける山本さん。喜ぶ住人たち。

ここで暗転し、変わりに映ったスクリーンには、今回採用された漫画のキャラの数々。

そして明転。
 相変わらずゴミ屋敷の右端と左端。
 ところが、真ん中の修士邸にもゴミ袋の数々が… で、終わる。


[感想]
「きれいすぎる」。

まず、そう思った。
 迷惑野郎と思ってた人が実は良い人で、
 いやみっぽい編集者も話が分かる奴で、
 漫画家志望の青年も芽が出て…と。

 全てが良い方向でまとまり、どたばたするどんでん返しも起こらないで、客電が点いた時、
 (えっ?ここで終わり?)
 と思った。
 “コント”を見たというより、随所にユーモアを取りいれた短編のお芝居を見に行った感じだった。
 
 困った人達は、実は修士さんのことを凄く心配していて、修士さんの可能性を何よりも信じていて。
 (現実には有り得ない)と思った。
 登場人物の誰もが善人だなんて、起こりっこない。

だけど、
 (そういう結末であって欲しい)
 と思っていたのもまた事実だった。

 これを
 「あーぁ、甘い話」だとか
 「現実では100%起こる訳ないやん」
 の一言で決めつけてしまうと、そういうふうにしか思えない自分が寂しくなる。
 (甘い)と思いつつも、その“甘さ”をどこかではずっと信じていたい。

2丁拳銃の創るものには、そういう“甘さ”はたくさんある。
 「チャカ〜銃歌〜」はその典型だろう。
 ダメおやじが実は凄く息子思いだった、とか。
 ストーカー男は、本当は凄く彼女を好きなんだけど、表現方法を間違えてるからどうしても伝わらない寂しさを抱えているんだ、とか。

だけど、その“甘さ”を捨てきれない2丁拳銃の世界観が私はやっぱり好きだ。
 ありのままを見て、ありのままを受け容れる雰囲気がすごく好き。
 「甘い話」とか
 「みんな良い人ばかりなんて有り得る訳ないやん」
 と笑われても、小堀さんはそういうものを創り続けるだろうし、見てるこちらも創り続けて欲しい、と願ってしまう。

(ありえ〜ん)と笑ってしまう一方で、
 (どうか夢を見させてください)
 と祈る自分がいる。

 (ありえないというのは分かってる。
 だけど、だけど…。
 もしかしたら…もしかしたら、起こることもあるのかもしれない)
 と。

2丁拳銃の舞台を見に行くと、人を信じ続けたいし好きでいたいと思う。
 そして、「人間」から逃げたくないなぁ…とも思う。
 自分の内面含め、相手と向き合うこと含め。

 「人」と向き合うことから逃げないようなものを、2丁拳銃にはこれからも創り続けて欲しい。

=======================================
今回のSPコントの笑いどころというかハプニングは、

(1)修士さんの家のドアが完全に閉まらないので閉めに戻るはめに。

(2)河本さんを修士さんが強くどつき過ぎ、準ちゃん、セリフを飛ばす

(3)小堀さんが演じるゴミ屋敷の主のビジュアルは、 2丁目閉館ビデオの最後辺りに出てくる「ル○ペ○」役のコバよりも汚らしかった(笑)。
 そして、その姿が、またハマってました(笑)。
 思わず、
 「アイセナイキタナサ、コホリ!」
 とメモったぐらい(^^;。

 ゴミが出たら凄い勢いで拾いに来てその勢いで戻って行くんですが、部屋の前に山積みされてあるゴミ袋を、しゅぱぱっと飛び越えて入る様は中々の圧巻。
 小堀さんが嫌がる
 「舞台中の拍手」
 がちらほら起きるぐらいの勢い。
 しかし、ノブのとこで手の平を思いっきり打ってたのは、やっぱり小堀さんですねぇ (笑)。

(4)何の躊躇いもなく樅野家を自分の家と間違えて入った修士さん。
 しかも間違えてることに気づかなかったらしくしばらく戻って来なかった(^^;。
 慌てて出て来ると
 「表札がいるなぁ」
 とアドリブ。

でした。

ライブレポート
home