落語寄席4(09/10/17 於 浅草花月)
【出演】
笑福亭瓶成/立川志ら乃/サカイスト・まさよし/月亭方正/
小堀裕之(2丁拳銃)/桂三若
注: ■...古典落語 □..新作落語(古典落語ではないもの全般) <前半> 1.笑福亭瓶成:■「いらち俥」 2か月ほど前に拠点を東京に移したそうで、東京と大阪の車内風景の違いや、発車順の言い方の違いなどをマクラに持って来た後、昔の駅にはタクシー代わりの人力車があちこちいたそうですが、こんな人に当たってしまうと…というような入り方で「いらち俥」を繰る。 自分自身もいらちなんですよ〜と言っていたが、そのいらちが原因で大阪でしくじっただけに、東京では抑えながら生活していただきたいなぁ、と思いながら聞いていた。 まさか、この名前でまた高座に出ている姿を見ることがあるとは思っていなかった。 2.立川志ら乃:■「火焔太鼓」 楽屋では自分以外関西勢で、肩身が狭かったものの江戸落語を…ということで「火焔太鼓」。 志らく師譲りの立て板に水といった感じで流暢な喋りを披露していたが、あまりに流暢過ぎて、1〜2回ほど置いて行かれそうにも。 噺は分かりやすくて面白かった。 夫婦の丁々発止なやり取りが特に。 3.サカイスト・まさよし:□「告白」 落語をするのは初めてらしく、羽織を脱ぐタイミングや扇子の使い方もよく分かってないので、扇子や手ぬぐいを使いだしたら拍手してください〜と客席にお願いするまさよしさん。 そういえば小堀さんも落語をやりたての頃そんな感じだったなぁと思い出す。 噺は、好きな女性にどういう風に告白をすれば良いか、晩熟で不器用な弟がちゃらい兄貴に教えを乞う、というもの。 劇場に行っていないのでサカイストの漫才も久しく見ていないが、にーちゃんが相変わらずぶっ飛んだ思考とちゃらいビジュアルらしいことが噺の端々で分かり、それにも笑った。 4.月亭方正:■「手水廻し」 今までやってきた仕事をマクラで話してみようかとメモに書き出してみたら、見事なまでに芸人というよりスタントマンの仕事ばかりで若干嫌になったとか。 それでも数年前から落語の仕事もやるようになった方正さん。 月亭八方師匠から名前まで貰っているが、「くださ〜い!」「やるわ〜」という軽いノリで貰ってしまったとか(^^ゞ。 土地ごとに言葉や風習は異なる、という入りから「手水廻し」。 人によっては、歯磨き粉を溶かした手水を飲み干す、みたいな想像すると若干吐き気がこみ上げるような描写を詳細にやったりするが、方正さんの「手水」は塩のみだったので、気持ち悪くならずに聞くことが出来た。 旦那の手水まで飲み干す羽目になった料理人がどさくさにまぎれて旦那への恨み節を吐く、という演出は余り見たことがなく、面白かった <後半> 5.小堀裕之:□「獅子の子」 今回も出囃子はトトロのテーマ。 落語の時はこれでいくらしい。 ちょうど2週間前にルミネで「百式」を見たばかりだったが、なんだか先々週よりもやせ細った感じで、(あれ、この人こんなに細かったっけ?)と少々心配になる。 先々週は自分達のファンが多勢占めているはずのライブでアウェイ感を感じた小堀さんだが、今日のアウェイ感はその倍以上。 遠巻きに様子見、という感じでなかなか自分の話に食いついて来ない客席に、近づいてくるようお願いする一幕も。 「落語寄席」の客席は、誰かを目当てでやって来たというよりも、“落語”そのものを聞きたくてやって来た、という感じなので、普段の自分達のライブとは違う客席の雰囲気に面喰っている演者も多かった。 とはいっても、なんだかんだいって2丁拳銃にはほかの出演者の方よりも少しは思い入れがあるので、普段の3割増しぐらいの反応をしようと、心中決意(^^ゞ。 マクラのエピソードは、高倉健方式の挨拶を後輩にしようとして見事に失敗したことや、フリスクをめぐるコンビニ店員のおばあちゃんの葛藤など。 不景気やから高齢者でも働かなきゃいけなくて、大変ですね、動物園も今不景気で大変らしいですよ、と言ったと思ったら、「わー、けーえーなんや〜(経営難や〜)、どーしよー」と、修士さんの声で脳内再生されるセリフを吐きだしたので、(えぇ〜、ブログで告知していた新作って、まさかの“「動物園漫才」のリメイク”っすか!?)と、若干びっくりした。 ブログで新作の「獅子の子」という噺をやります、と告知していたが、(ライオンは崖から突き落として這い上がって来る子だけ育てる、とかいう内容かな。『ハンカチ』が夫婦ものだったから、今回は」『埴輪』以来の父子ものをやるのかな)とか、予想していたが、頼りない経営者と詰めが甘い取立人の噺とは予想外。 大筋は「百式2007」に収録されているものと変わりないが、“取立人も小さい頃よくこの動物園に遊びに来ていた”という設定が追加されていて、この設定がサゲでも活かされていた。 「百式2007」での「動物園漫才」は、次の漫才に繋がる形ではっきりとしたオチはなかったが、「獅子の子」は、取立人のセリフでサゲる形で、 「動物園漫才」と「獅子の子」は、同じに見えて別の話であるという差別化がはっきり出来た。 その終わり方は、いかにも小堀さんが作る世界そのものといった感じの甘いものだったが、このセリフでサゲられることで、噺がぐっと引き締まった。 その一言で、借金の返済を迫りながらも、一番現実的で手っ取り早い方法に踏み切ることはどうしても出来ないでいる取立人の別の一面や、八方塞がりで絶望的な状況の中、微かに差し込んでくる救いの光が見える気がした。 6.桂三若:□「大阪嫌い(※正式タイトル不明)」 東京に憧れる大阪人が、東京から転勤してきた同僚を休日に家に招き、東京の良いところを挙げ、大阪の欠点をこきおろして同意を得ようとするが、いまいち反応が薄い。というのも…という噺だが、サゲが強烈。 どちらかというとからっとした噺をするという印象が三若さんにはあるので、ブラックな終わり方は意外だったが、後味は全く悪いものではなく、むしろ(わぁ〜、こんなサゲ方もあるんだ〜)と、落語の幅の広さをまた知ったという感じだった。 (09/10/18 記) |