百式〜とうきょう式
(2006/12/17 atルミネtheよしもと)

【出演】
2丁拳銃

<開場〜開演>

4じ6じの新喜劇が某Hんこん班だったので開場時間は延びるだろうと踏み、18時50分頃行ってみたらまだ準備中でロビーは大混雑。
 6階と7階の間の踊り場にあちこちで「カッコイイ」と評判だった今年のポスターが貼ってあったので、(あぁ、これがそれか)と思いながら見る。
 確かに2丁拳銃がパーンだった。
 DVDのジャケットに使われているセンターマイクだけのあのシンプルな図案は2丁拳銃が表に全く出ていないけれど、“漫才ライブ”ということを堂々と宣言している気がしてあれも凄く気に入っている。

19時頃やっと開場。
 謎の50分押しで客の静かな怒りを買いつつ始まった2月の「ラ・テ欄」の再来がちらりと頭をよぎる。
 あの時ももしかしたら前の新喜劇がほんこん(もう名前を出す)班だったのかも。
 もしそうだったのなら、怒ってごめんなさい、と謙虚な気持ちになる。
 ほんこん班の新喜劇後ならば、YOSHIMOTOライブ枠の30分押しのスタートはデフォルトというか許容範囲だ。

 紀伊國屋書店でフラフラと衝動買いしてしまった「笑芸人」のバックナンバーを食い入るように見ていたら、丁度後ろに座っていたサイトのお客さんに声を掛けられ、何となく浮気現場を見られたような後ろめたさを若干覚える。


19時30分頃開演。
 いつものごとくシュッとした(ある意味頑張ってる感が溢れる)ブリッジが流れた後、出囃子が鳴る。
 もちろん「44口径」だけど、今年はGB+2丁拳銃Ver.。
 「百式2005」DVDの44口径もこのバージョンだが、ブルーハーツが唄わなかったら、著作権使用料やら何やらの問題はクリアされてDVDにそのままいれられるのかな?
 「百式2003」「百式2004」は、劇場ではちゃんと使われている「44口径」がインストルメンタルの別物に差し替えられてちょっと違和感があったので、出囃子がちゃんと収録されるのなら喜ばしい出来事。
 2丁拳銃の出囃子に「44口径」以外はやはり有り得ない。

幕が開く。
 今までは2人の自筆による「百」「式」の書が上手・下手に貼られたり、メクリ担当が構成作家の伊部さんだったりなど、手作り感&経費節減感満載の舞台だったが、今回は美術さんの全面協力による立体文字「百式2006」がデーン。
 いい反応をする客多数。


<本編>

・「(2丁拳銃は)口元が残念なコンビ」(発言・小堀裕之)
・「ハグキに敬礼!」を強引に押す小堀さん。今年流行らせるつもりと勢い込むが「後2週間しかないわ!」と修士さんからつっこまれる。

◇くしゃみ

◇曖昧な言葉をはっきりと

◇理想の子供(ライム漫才)

◇さいごのおつかい

◇デカクッキング

◇メタボ○○

◇マネージャー中村

◇物凄いお金持ちになったら〜修士編
◇物凄いお金持ちになったら〜小堀編
 (この2つ、何か見た覚えがあるなぁと思ったら去年の「漫才シワス!」だった。あの時ハリガネロックから勝手に拝借していた「服くれ、服くれ!」のボケは今回はお蔵入り...だったと思う)

◇不動産(アノ男)

◇ビッグな仕事〜戦争映画
 (伝わり方によっては微妙な問題をはらむ設定だからと、一部の関係者からはやんわりと設定を変えるようお願いされたらしいが、そのまま強行した作者・小堀さん。風刺漫才でも何でもないのに、これもダメなの?と、規制の厳しさに驚いた)

◇サンタクロース漫才
◇サンタクロース漫才その2
 (「美しい物語をつよく求める者は、恐ろしくみにくい生の赤裸々な姿をその目で見た者ではないか(五木寛之著・角川文庫「生きるヒント2」P139より引用)」という言葉がぴったりなネタ)

◇忍者ごっこ(結成1年目コンビネタ)
 (小堀さんが漫才中に大怪我をすることがあれば、かなりの確率でこのネタをしている時だろうなぁ、と不謹慎なことをつい思った。どさくさ紛れに絶妙のタイミングで小堀さんの弁慶の泣き所にケリを入れた修士さんに何故か(お見事!)と心の中で賞賛。このネタの時は、修士さんもちょいちょいアドリブを入れたりし、小堀さんほどはいかなくても、いつもの修士さんに比べると自由に遊んでいる雰囲気)

・噂の百式
 (こういうオチのつけ方好きだな〜、と思った。考えてみれば「百式」は毎年オチのつけ方違うよなぁ。で、毎年(このオチのつけ方好き)と思っている)


<終演>


今年は104分。
 修士さんによれば、カブセを多めにしてしまったところがあるのでそこで延びたのだろうとのこと。
 去年は96分だったので、去年足りなかった分を今年に回したと思えばいいような、そんな問題ではないような。
 「百式」が始まった頃は、“100分”にどれだけ近づけるかどきどきしながら見ていたけど、“きっちり100分出来る”ことが去年の大阪で証明されたこともあり、そんなに見ながらどきどきはしなくなったなぁ。

 東京と大阪しか回れなかったが、来年は他のところも行きたいけれど、どうなるかはまだ分からない、といった状況のよう。
 来年は6月か9月にやりたいという小堀さんに、6月だと後半年しかないからしんどい、と修士さん。
 ちなみに芸人が一番暇なのは9月らしい。
 夏休み明け云々と言っていたがよく分からなかった。

 構成作家にもみのさんが加わっていることが発表されると客席が一斉にどよめく。
 もみのの方が人気ある!と拗ねる2人だったが、解散して2年経ってもこんなに大勢の人達の心の中でチャイルドマシーンがまだ生き続けていることの凄さに驚き、変わらない思いの温かさにちょっとほわんとした。




<感想>


「百式」も今年で5年目。
 場所や会場規模は異なるが、幸い初年度から欠かさず行くことが出来た。
 「漫才を100分やる」という単純な形式がいかに大変で難しいことであるか、しかしそれがどんなに新鮮でワクワクして面白いことであるかを教えてくれたイベントだった。

2丁拳銃のイベントに行く度に(感情が更新されますように)と思う。
 前のイベントも面白かったけれど今回はもっと面白かったとか、コントライブでよく気づかされる笑いの裏にある微かな痛みや切なさとか。
 それらを感じられたことに安心して劇場を後にして来た。

しかし、心苦しいけれど今回のイベントは初めて感情の更新が出来なかった。
 それは私の2丁拳銃を楽しむ勘が鈍っていることと、私の漫才の楽しみ方が変わったこと以外に原因は無い。

 新しい分野や世界に興味を持ち始めた時、私は<興味を覚えるものは節操無く追い掛けるけれど、軸足はいつも2丁拳銃に置いている。そして、気づけばまた2丁拳銃に戻っている>とよく書く。
 だけど、軸足だけ置いていても、目がよそを向いていれば殆ど意味が無い、ということを「百式」が進むにつれて痛感した。
 自分ではほんのちょっとのつもりだったが、実は近頃の私は大分よそ見をしていたらしく、客席と舞台の一体感に何故か気後れを覚えてその空気に乗れなかったことがところどころあった。
 どういう場面の時かというと、ファンなら分かる、とか過去の百式を見たことがある人ならお馴染みの...という、いわば“遊び”の部分。
 2人のキャラやイメージが共有されていることを前提に進んでいくネタの時、以前の私だったら間違いなくそういう場面では率先して乗っかって遊びを楽しんでいた。
 遊びが分かることが楽しかった。

 だが、今回はそういう遊びを楽しむよりも(2丁拳銃だからやれるネタだけど、もし私が2丁拳銃をそれほど知らなかったら、このネタはどこまで楽しめるんだろう)という疑問が遊びの場面にさしかかる度にフッとよぎることが多く、笑いの輪に無防備に入り込めなくなっていた。

私の好みの漫才は基本「しゃべくり漫才」である。
 派手な動きや奇抜なパフォーマンスに頼ることなく、誰かが傷ついたり不快に思う言葉は一切使わずに2人の掛け合いだけでどんどん世界が広がっていく漫才。
 2丁拳銃の漫才で惹かれたのは、「ライム漫才」の心地良さだ。
 修士さんがあげた言葉を小堀さんが語呂は似ていてもまったく別ものである予想外の言葉に変えて投げ返し、返って来たボケに修士さんがスパーン!と小気味良いツッコミを入れて締めるあの形式。
 ライム漫才が始まると気づいたときはわくわくする。

 (言葉にこだわる漫才をずっと続けてくれますように)と思いながら漫才を今まで見て来たが、特に最近はそれに加えて(5年後、10年後、20年後、50年後...と、演者、客それぞれが年を取っても変わらずやれるネタ、笑えるネタでありますように)と、思うようになった。
 今しかやれないネタは凄く大事だと思う。
 でも、旬はすぐ過ぎ去って過去になってしまい、いつまでも楽しめるものではない。
 “遊びを楽しむ勘”とも重複するけれど、会場は大ウケだが(今だからやれるし笑えるけれど、そんなに長いことこれはやれないよなぁ)と思ったネタがいくつかあり、それに少し寂しくなったりした。
 今だけじゃなくこれからも笑いたいのになぁ、と。

 私は2丁拳銃の漫才を長く楽しんでいけたらと思っている。
 そして、その漫才が、出来れば“イメージ”が前面に出ることで面白みが増すのではなく、2人の“味”が滲み出ることで自然と笑いが誘われるようなものであればなぁ...という願望を持っている。
 2丁拳銃のことだから、今年見たネタのいくつかはフレーズや設定を変えながらこれからもやり続けると思う。
 それが1本でも多くあればいいなぁと願う。

 楽しむ勘が鈍っていても、私にとって2丁拳銃が好きなままで長く見ていきたい芸人の1組であることに変わりは無い。

(06/12/23 記)

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